なぜそうなるか
突然来た業者と契約した外壁塗装は、クーリング・オフできる?——消費者庁は「書面を受け取った日から8日以内」と書き、工事が始まっていても元に戻してもらえると説明しています
ある日、見知らぬ業者が玄関先に来て、家の外壁にひびや色あせがあると教えてくれることがあります。
言われてみると、確かに塗装が古くなっている気がしてきます。今なら近くで作業しているので安くできる、と勧められれば、その場で申込書に名前を書いてしまうこともあるでしょう。
ところが、家族に話したり、ほかの業者の話を聞いたりすると、急いで決める必要はなかったのでは、と思い直すことも少なくありません。
そのときに頭に浮かぶのが、クーリング・オフという言葉です。ただ、外壁の塗装のような工事にも使えるのか、何日以内なのか、いつから数えるのかは、はっきり覚えていない方が多いはずです。
そこで、消費者庁の「特定商取引法ガイド」と、国民生活センターが公表している相談の傾向、国土交通省の建設業許可の説明を開いて、関係する部分を並べました。
以下では、それぞれの原文を引いて整理します。ご自身の契約がどれに当てはまるかは、この記事では判断しません。
・自宅で契約した工事は、特定商取引法の「訪問販売」に当たることがある
・クーリング・オフの期間は、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内
・工事が始まっていても、対価を払う必要はなく、元に戻してもらえると消費者庁は説明している
・自分から業者を呼んだ場合は、扱いが変わることがある
・国民生活センターには、訪問販売によるリフォーム工事と点検商法の相談が多く寄せられている
自宅で契約した外壁塗装は「訪問販売」にあたるの?
業者が家に来て契約したら、それだけで訪問販売になる?
特定商取引法ガイドの「訪問販売」のページにある定義はこうです。
外壁の塗装は、品物を買うのではなく、工事というサービス(役務)を頼む契約です。このページは「役務の提供」も含めて書いています。家に来た業者と自宅で工事の契約を結ぶ形は、この定義の書き方に沿うと読めます。「訪問販売」とは、販売業者又は役務提供事業者(※)が、営業所等以外の場所(例えば、消費者の自宅)で契約を締結等して行う商品、特定権利の販売又は役務の提供等のことをいいます。
国民生活センターも、訪問販売によるリフォーム工事の相談をまとめたページの冒頭に、次の一文を置いています。
訪問販売によるリフォーム工事では、「契約をせかされて不要なリフォーム工事をした」などといった相談が寄せられています。
このページの集計では、屋根・壁・増改築・塗装・内装の工事をまとめて「リフォーム工事」として数えています。2025年度の相談件数は5,544件でした。
クーリング・オフの期間は、いつから数えるの?
8日と聞いたことがあるけれど、契約した日から数えるの?
同じ「訪問販売」のページの、クーリング・オフの項はこうです。
数え始めるのは契約した日ではなく、書面を受け取った日という書き方です。手段も、書面に加えて電磁的記録(電子メールなど)が挙げられています。訪問販売の際、消費者が契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができます。
その書面について、このページは事業者の側の決まりも書いています。
また、クーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。
手元の契約書に、赤い枠で囲まれたクーリング・オフの説明があるかどうかは、自分で確かめられる点のひとつです。
8日を過ぎていたら、もうできないの?
期間を過ぎてから気づいた場合は、あきらめるしかない?
たとえば「工事の契約は取り消せない」と言われて手続きをしなかった場合が、この文に近い形です。期間の数え方だけでなく、業者に何を言われたかも関係してくることになります。実際に当たるかどうかは、消費生活センターなどの窓口で相談するのが確かです。なお、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます
工事がもう始まっていたら、どうなるの?
足場を組んだり、塗り始めたりしたあとでも、取りやめられる?
クーリング・オフをした後の扱いについて、「訪問販売」のページの解説はこう書いています。
また、商品が使用されている場合や、役務が既に提供されている場合でも、その対価を支払う必要はありません。
続く部分には、工事に関わる一文があります。
外壁も建物の一部です。工事が始まっていることは、それだけでクーリング・オフをあきらめる理由にはならない、というのがこの解説の書き方です。土地又は建物その他の工作物の現状が変更されている場合には、無償で元に戻してもらうことができます。
「点検します」から始まる勧誘には、どんな相談があるの?
無料で点検してくれるという話は、よくあることなの?
2023年10月に国民生活センターが出した注意喚起は、点検商法をこう説明しています。
点検商法とは、「近所で行う工事の挨拶に来た」などと言って突然訪問し、「屋根瓦がずれているため点検してあげる」と言って点検した後、「このままだと瓦が飛んでご近所に迷惑がかかる」などと不安をあおって工事の契約をする手口です。
この発表は屋根工事を主に扱っていますが、紹介している相談事例の見出しには、外壁も出てきます。
屋根や外壁、床下等の修繕を次々と勧誘され契約した。
国民生活センターの集計では、点検商法の相談件数は2025年度で19,696件でした。同じ発表の消費者へのアドバイスは、最初の一文をこう始めています。
突然訪問してきた業者には安易に点検させないようにしましょう。
業者が建設業の許可を持っているかは、関係あるの?
塗装工事の業者は、みんな許可を持っているもの?
国土交通省の「建設業の許可とは」のページは、原則をこう書いています。
建設工事の完成を請け負うことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。
そのうえで、許可が必ずしも要らない「軽微な建設工事」の一つとして、次の工事を挙げています。
同じページには、この金額に消費税を含むとも書かれています。許可を持っていないことが、それだけで違法を意味するわけではありません。一方で、許可の有無は業者に尋ねたり、許可行政庁で調べたりできる事実です。契約の前に確かめる材料のひとつになります。建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
この記事で確認したこと
・消費者の自宅など営業所以外で結ぶ契約は「訪問販売」と説明されている
・期間は、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内
・業者がクーリング・オフについて事実と違うことを告げた場合などは、期間を過ぎてもできる
・工事が始まっていても対価は不要で、建物の現状が変わっていれば無償で元に戻してもらえる
・500万円未満の工事(建築一式以外)だけなら、建設業の許可は必ずしも要らない
迷ったときは、契約書の日付と赤枠の記載を手元で確かめてから、窓口に相談すると話が早く進みます。
よくある質問
自分から業者を呼んで見積もりを頼んだ場合も、同じですか
自宅で契約する意思をあらかじめ示して業者を呼んだ場合は、訪問販売の規制の外になることがある、と消費者庁のQ&Aにあります。その「請求した者」の意味については、次のように書かれています。
同号の「請求した者」とは、購入者が契約の申込み又は締結をする意思をあらかじめ有し、その住居において当該契約の申込み又は締結を行いたい旨の明確な意思表示をした場合が該当します。
同じQ&Aは、チラシの表示額と実際の請求額に大きな開きがあった事例では「請求した者」とはいえないと考えられる、という判断も示しています。ご自身の場合がどちらに近いかは、消費生活センターなどでご確認ください。
どこに相談すればよいですか
国民生活センターの注意喚起は、消費者ホットライン「188」と、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」を案内しています。188はお近くの消費生活センターなどにつながる番号です。
クーリング・オフは電話で伝えてもよいですか
消費者庁のページが挙げる手段は「書面又は電磁的記録」です。同じページは、後のトラブルを避けるため、郵便なら記録の残る方法で送り、メールなら送信したものを保存しておくことを勧めています。
この整理が変わる条件
- 消費者庁が、特定商取引法ガイドの「訪問販売」や適用除外のQ&Aのページを改めた場合
- 国民生活センターが、リフォーム工事・点検商法の相談の傾向や注意喚起を更新した場合
- 特定商取引法や建設業法、その施行令が改正された場合
出典
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売等の適用除外に関するQ&A」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/exclusion.html
- 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/reformtenken.html
- 国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231011_1.html
- 国土交通省「建設業の許可とは」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
契約について判断する前に、手元の契約書と、消費者庁・国民生活センターの最新の案内をあわせてご確認ください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: